虚言癖
虚言癖がある人っておるやん。
本当にどーでもいい嘘をつく人。
嘘をつく理由はほんまに人それぞれやと思うけど、そんなかでも一番うっとうしいのが自分を大きく見せようと思って嘘をつくやつ。
ほんまにしょーもない。
別にちゃんと調査とかしたことないからはっきりしたことは分からんけど、ある程度人望もあって、嘘つかんでもわりかし輝かしい経歴を持ってる人ほどしょーもない嘘をつく傾向があるような気がするわ。
いわゆる「意識高い系」ちゅうんかな。でも、本当の意識高い系は嘘なんてつかへんで。だから、嘘ついてまで「俺意識高い系やで」って周りのやつに認識させたいようなやつは結局ただの嘘つきで、偽「意識高い系」なんやな。
うちの大学にもほんまにしょーもない嘘つくやつがおるわ。
俺もそいつと結構仲良くしとったけど、そいつの話のほとんどが嘘やと分かってからは、ちょっと距離置くようになった。
入学当初って、皆のこと知らんから、一応結構フォーマルな自己紹介みたいなんするやん。
まあ、もちろん大学生やから肩書なんてないし、名刺もない。だから、口で説明するしかないんやけど、口で説明するだけのことやから、結局言い方ひとつでどうにでもなるわな。
そいつがどういう人生を歩んできたかなんかそいつの両親家族を除いて誰も知らんし、細かい嘘つき通すなんて簡単やわな。
最初にそいつと出会ってお互い自己紹介して、心ん中では「ああ、なんかこいつとは気が合いそうやな」と思ったんやけど、今思えばちょっと腹立ってくるわ。
そいつ最初の自己紹介では、「スイスで育って、野球やってて、大学に入学する前は世界のあちこちを旅行してた」みたいなことを言ってたんやけど、そんなもん初対面なんやし、信じるやろ!?
「スイスで育って、野球やってて、大学に入学する前は世界のあちこちを旅行してた」って普通の日本人にはない経歴やん!?
そんで俺ともだいぶ共通点あるし。
スイスってとこは違うけど、海外で育ったんは一緒やし、野球やってんのも一緒やし。
そんで、そいつの自己紹介終わって、俺も自己紹介して、「え~そんなら俺らけっこう似てる部分あるなあ」って感じになって、その日はそれで終わった。
まあ、あん時はみんな名前と顔を一致させんのに必死やし、普通のやつなら「ああそんなんや」で終わるはずの自己紹介やけど、そいつは経歴がけっこう特殊やし、俺と似てる部分があったから強く印象に残った。
そんで、後日学食で他の友達と飯食ってたら、そいつが隣に座ってきて、一緒に飯食いだした。
まあ、他の連中はそいつのこと見たことはあるけど面識はなかったみたいやったし、そのまま横で無言で飯食われても困るから、いちおう俺が「ああ、こいつ〇〇っていって、スイスからの帰国子女で、野球やってるらしいわ」って紹介してやった。
その時点では、誰もそいつが嘘ついたなんて夢にも思わへんやん。
ていうか、なんで初対面で自分の経歴を詐称せなあかんねん。
それが分かったんは、初対面からしばらく経った後で、俺は友達と学校近くの空き地でキャッチボールしてた時のこと。
その日はゴールデンウィークのちょっと前で、もう既に暑くなりだして、キャッチボールを10分もやったら汗だらだらになって、「ああ~休憩したいわ~」と思っていたところに、そいつは通りかかった。
俺は「あっ!やっと休憩できるで!」と思って、そいつの名前を大声で呼んだ。
「おーい!キャッチボールせえへん!?」って呼んだら、そいつは笑顔で来てくれた。
グローブとボール渡して、キャッチボールを代わってもらった。
ほんまにびっくりしたわ。
全然できへんやん!!
まず投げ方がおかしいのは仕方がないわ。
野球歴あるやつでも変わった投げ方するやつはおる。
プロ野球選手にもけっこう独特な投げ方する選手はおる。
でも、いくら投げ方が変わっていても、ボールが捕れへんプロ野球選手はおらんわな。
そいつ、投げるんはかなり山なりやけど、距離は届いてるし、「まあ、ちょっと投げ方が変わってるだけなんかな」と思ってたら、ほんまにびっくりしたわ。
ボールが捕れへんねん。ポロポロポロポロ。。。
しかも、ボールが向かってくると体避けてしまってるし。。。
ああ、こいつ野球やったことないな。。。
ボールの捕り方見れば分かるわ。。。
この前「俺野球やってた」って言ったやん。。。
自信満々に「俺野球やってた」って言ったやん。。。
あれ嘘やったんや。。。
何その女みたいな投げ方。。。思いっきり初心者やし。。。
そんで、結局そいつが自己紹介で話した「スイス育ち、野球やってた、大学入学前に世界を旅行してた」のうち、2つが嘘やったんが分かった。
スイスに滞在したことはあるらしい。
でも、それは、高校二年のときに短期留学に行っただけのはなし。
3週間スイスに滞在した。そんだけの話。
それ、短期留学って言うんやで。
「育った」っていうんは、小さい時そこに住んでたって場合や。
お前そん時もう高校生やから何年滞在したとしても「育った」とは言えへんねん。
確かに、うちの大学は帰国子女が多いわ。そんで、なんか知らんけど、純ジャパとかよう分からん呼び方があるんも知ってる。けど、そんなん嘘ついたって仕方がないやん。
「スイスで育った」んなら、ドイツ語かフランス語喋れるはずやろ!?絶対とは言えんかもしれんけど、少なくとも最低限の知識は知ってるはずやん!?
そんで、英語も日本人訛りって言うか、明らかに日本人やって分かるような英語を喋るわけないやん。本当に「スイス育ち」ならな。
でも、そいつ一年生は全員受けないかん英語の授業で一緒のクラスになって、そいつの英語聞いてたら、全然話せんし、発音もめちゃくちゃやし、「こいつ絶対スイス育ちやないやん」って丸わかり。
ほんましょーもない嘘つきやがって。
まあ、本人にわざわざ「おい、お前ほんまはスイス育ちやないやろ?」って聞くんも嫌やし、もう本人が「スイス育ち」言うんやから、そのままにしてやろ思った。
ああ、ちなみに、スイス短期留学の話は、そいつが別の友達に酒の席で「スイスは高校の時短期留学で行ってた」っていうのを吐いたのを又聞きしたんやけど、当然「えっ!?あいつ初対面の時ハワイ育ち言うてたやん」思ったわ。
世界を旅行したっていうのは、まあ、半分本当で半分嘘。
世界を旅行したって言ったら、みんなはどういうんを思い浮かべる?
俺は、地球上の全ての国を旅行したまではいかんくても、「世界」って言うくらいやから、せめて全部の大陸制覇くらいはしたんやろなと思ってた。
んで、何かの授業のプレゼンでそいつが自分の旅行歴を紹介してて、「東アジアとアフリカを旅行したことがあります」って言ってて、「え!?じゃあ、それ世界旅行とは違うやん!?」って心の中でツッコミを入れた時に「ああ、あれもやっぱり、嘘とは言わんけど、少なくとも本当ではないやん」と気付いた。
そいつが言う「東南アジア」がどこを指してんのか知らんし、「東南アジアとアフリカだけやったら、世界なわけないやん」って言いたかったけど、そこは別に改めて言うようなことちゃうし、もう「こいつは嘘つきや」ってのが俺の中で決まっていたから、もうそういうことにしてやろうと思った。
そいつはちょっと極端な例やと思う。
そんなすぐばれるような嘘をつくやつは珍しい。
嘘つくってことは、その嘘を嘘じゃなくするために、また違う嘘をつけないかんてことや。
嘘が嘘を呼ぶっていうか、一つの嘘がさらなる嘘に繋がるやん。
そんなんいつかばれるで。
よっぽど頭良いやつやないと、嘘つき通すことなんてできへんわ。
嘘つくんにも頭使わないかんちゅうことやな。
虚言癖があるってばれてしまってるやつはあんま頭良くないってことや。
ばれる心配があるなら嘘なんてつかんほうがええ。
誰も得せんから。