年寄りを見て育つ
俺が本当に小さい頃、3つか4つ、アメリカに引っ越す前のこと。
俺が住んでた場所っていうのは、都会の近くの小さな町、つまりはベッドタウンで、人口は確か6万か7万人くらい。
これといった観光名所もないし、これといって有名な会社もない。
ここ出身の有名人もいないし、本当に平凡。
今は電車で20分くらいで行ける都心部で働いているサラリーマンとその家族が多くて、昔ながらの近所付き合いが希薄になったと、うちのばあさんが嘆いていた。
昔ながらの近所付き合いが果たしてどのようなものなのか俺は知らないけど、ばあさんが言うには、昔は近所の人とそのへんで出くわしたらちゃんと挨拶をしたし、おしゃべりもした。
でも、今の若い人は近所の人をあからさまに避けている。
自発的にあいさつすることもなければ、誰かから挨拶されても声を出さずに会釈をするだけ。
町内の祭りとか飲み会にも参加しないし、回覧板を自分のとこで止めてしまう人もいるらしい。
まあ、お年寄りにしてみれば、若い人に対する不満っていうのは、昔との比較から生まれるんだろうけど、若い人はどう思ってるのだろう。
俺は確かにお年寄りの知り合いもおおいし、何よりうちのばあさんが身近にいる。でも、年齢的にはばあさんたちが言う若者たちの年齢に近い。
正直言って、若者があいさつしなくても、町内の祭りや飲み会に参加しなくても別に誰かに迷惑がかかるわけではない。
大体ここの年寄りにも問題があると思う。
若い人がきちんとルールを守って出したごみ袋をいちいちチェックしたり、わざと若い人に聞こえるように「最近の若い人は、、、」みたいな話をする。
そんな年寄りと誰が仲良くしたいと思うのだろうか。
この前も、最近ここに引っ越してきた30代の夫婦がゴミを出したとき、可燃ごみの中に一つだけ不燃ごみが入っていたのを、近所のばあさんが見つけ出して、文句を言いに来たらしい。
もう、それはやりすぎ。
逆に怖い。
いちいちゴミ袋をやぶいてまでやるかね!?
そんなばあさんと誰が仲良くしたいと思う?
昔は尊敬できる年寄りが多かった。
ゴミの出し方くらいのことでいちいち文句を言う年寄りなんていなかった。
子どもが危ないことをしていればすぐ叱ってくれたし、遊び相手にもなってくれた。
昔話を聞かせてくれたり、農作業を手伝わせてくれたり、軽トラに乗せてくれたりした。
若者も変わったけど、俺が子どもの頃中年だった人たちが今では老人になって、老人も変わった。
両方変わったなら、付き合い方も変わる。
年寄りを見て育つなんていう時代はもう終わったのかもしれない。
尊敬できる年寄りも少なくなった。
今後の近所付き合いはどうなるのだろう。。。