情報の縄張り理論

「情報の縄張り理論」というものをご存じでしょうか?

 

犬が自分の縄張りを持っているのはよく知られています。

 

犬を散歩させていると、犬がいつも決まった場所で立ち止まったり、用を足したりします。

 

それと同じ(!?)で、私たち人間が話す言語にも縄張りがあるという考え方があります。

 

情報の縄張り理論といいます。英語ではそのまま、The theory of territory of information になります。

 

お前、最近痩せたね。

 

この文は自然ですよね。久しぶりに会った友達が以前会った時より痩せていたのに驚いた時に「お前、最近痩せてたね」というのは普通です。

 

では、

 

お前、最近痩せた。

 

この文はどうでしょうか?

 

これちょっと不自然ですよね。

 

「なんでそんなに言い切るの?」って感じがしませんか?

 

上の二つの文の違いは「ね」があるかどうかだけです。

 

この「ね」は終助詞と呼ばれます。

 

なぜ二つ目の文は不自然なのでしょうか?

 

これを情報の縄張り理論で説明することができます。

 

まず、情報の縄張り理論がどういうものか見ていきましょう。

 

まず、自分の感覚を言う場合。

 

頭が痛い、寒気がする、足が痛い、クラクラするetc...

 

次に、外部から得られた情報について言う場合。

 

電車が見える、暑い、変な人がいるetc...

 

自分の専門また熟達領域に関して言う場合。

 

これは自分の専門分野やよく知っていることについて言う場合のことです。

 

それから、個人情報。

 

誕生日、住居、名前、電話番号、住所etc...

 

これらの情報は話してまたは聞き手にとって「近い」情報ということになります。つまり、縄張りの中に入っているというわけです。

 

さて、先ほど見た、Aさんの発話を見てみましょう。

 

Aさん:お前、最近痩せたね

 

この文をAさんは誰に言っているのでしょうか?

 

もちろんBさんです。(まあ、Bさんでも、Cさんでも、Dさんでも誰でもいいんですが)とにかく、Aさんの目の前にいる人です。電話でこういう会話をするかどうか?多分しないでしょう。

 

AさんはなぜBさんが痩せたと思ったのでしょうか?

 

もちろん、Aさんは久しぶりに会ったBさんの体型を見て、「痩せた」と言っているわけです。

 

Aさんにとって、これは外部から得られる情報になります。Aさんが自分の目で見てそう言っているわけですからこれは当然です。

 

ではAさんの話し相手Bさんにとってはどうでしょうか?

 

まあ、一般的に、自分が太ったか、それとも痩せたかは自分が一番よく知っています。ということは、これはBさんの個人情報だと考えることができます。

 

そういうわけで、「Bさんが太った」という情報はAさんとBさん両方ににとって縄張り内の情報ということになります。

 

そこで、日本語にはこんなルールがあります。

 

話し手と聞き手の両方の縄張り内に情報がある場合、文末が直接形+「ね」で終わる。

 

情報が話し手と聞き手の縄張り内にあるかどうかで使うことばが変わるんですね。

 

縄張りの情報理論には終助詞の「ね」だけでなく、他にもいろいろ応用することができます。

 

興味のある人は是非調べてみてください。