変わった先生

http://m.huffpost.com/jp/entry/7718608

 
僕がちょっとだけ通った日本の小学校の先生もこんな感じだった。
 
もう何年も前で、あの頃は体罰が当たり前で、先生の言うことは絶対。
 
先生は怖いのが当たり前で、口答えは許されない。
 
先生にとって一番厄介な生徒は、和を乱す生徒。
 
ひときわ目立つ生徒や問題行動を起こす生徒は容赦なく叱りつけ、ときに殴りつける。
 
六年生の時一学期だけ通った小学校の先生が面白い先生だった。
 
男の先生で歳は多分30代後半か40代前半。
 
あの学校の先生は愛教大出身がほとんどだったけど、あの先生は確か東京の大学出身で、名前は忘れてしまったけど結構有名な大学だったと思う。
 
まず先生の自己紹介が面白かった。
 
普通の自己紹介だと黒板に名前を書いて、当たり障りのないことを適当に言うだけ。
 
その先生の自己紹介は、小学校の先生の自己紹介にしてはちょっと変わっていて、まずクラス全員に先生の履歴書を配った。
 
「お前らがな後何年か経って、就活ちゅうもんをするときにな、これ使うんや。履歴書ちゅうやつや。これに自分のいろんな情報書き込むんや」
 
小学生相手の自己紹介で履歴書を使うのには驚いたが、よく考えると、これは印象にも残るし、履歴書は聞いただけの話とは違って消えないから、見たいときにいつでも見返すことができる。
 
さらに驚かされたのが、なんと先生の履歴書が一枚一枚全て手書きだったこと。
 
写真も全部カラーの本物。
 
証明写真を撮るにはもちろんお金がかかるし、履歴書を一枚一枚手書きするのだってものすごく時間がかかる。
 
履歴書を配り終わると、先生はクラスに向かって、「先生のことはたいていそこに書いてある。今度はお前らから質問してこい。ただしこの漢字なんて読むんですか?みたいな質問は帰ってから辞書で調べるか親に聞け。あっ、それとこの履歴書お前らの親にもちゃんと見せろよ。俺のこと知ってもらうチャンスや」と支持を出した。
 
他の奴らがどういう質問をしたかは覚えていないが、僕は、「趣味は映画鑑賞ってなってますけど先生が一番好きな映画は何ですか?」と聞いた。
 
すると先生は、「よっしゃ。じゃあ明日先生の一番好きな映画のビデオ持ってくるから、なんかの授業のときに皆で観よう」と言って、次の日本当にクラス全員で映画鑑賞をした。
映画の名前は忘れたけどピエロが出てくる、なんとなく悲しい気分になる映画だったと思う。教育映画ではなく普通の映画だった。
 
その先生の授業も基本的にお喋りの時間だった。
 
「難しいことを簡単に言える。つまらんことを面白く言える。これが本当の頭の良さや」が先生の口癖だった。
 
先生が前で板書をして、長々と説明するなんてことは一回もなかった。
 
基本的にお喋りの時間。
 
先生が一方的に喋るのではなくて、常に誰かと対話をしている
 
「お前の家の近くにスーパーあるやろ?なんて名前やった?それや。そのスーパーの横の道真っ直ぐ行ったら何がある?せやろ。あの石像の名前知ってるか?アホか!なんで知らんのや。自分の家の近くのことやろ。毎日ボケっと歩かんと周りもっと気にしてみ。いろんな発見があるわ。ああ、ちなみにあの石像はなあ、さっき教科書に出てきた誰々の弟で、あのへんにでっかい森があって、そん中に神社あるやろ?あのへんで誰々と戦って勝ったんや。なんで戦ったか知ってるか?」
 
ずーっとこんな感じ。
 
先生は脇の知識がすごくて、生徒に関する情報も全て頭にインプットされていた。
 
口は悪いけど、あの先生に「アホか」言われても、全然嫌な感じはしなかった。
 
いつも生徒に喧嘩を売っているような調子で喋るけど、それでいて先生との会話の中からいろいろなことを学べる。先生の頭の中はいったいどうなっているんだろう。
 
あれだけペラペラ流れるように喋れるのは頭がいい証拠だと思う。先生は頭の回転が物凄く速かったんだと思う。
 
しかも、授業参観の時も先生は変わらない。保護者の前でも平気で「アホか!」だ。
 
あの先生みたいな先生ばかりだったら、日本の教育も少しはましになると思うけど、多分今あんな先生がいたら保護者から文句が来るんだろうな。