席を譲るか譲らないかは結局考えたか次第

電車やバス(私はバスにはほとんど乗らないのであまりバスのことは知りませんが)に乗ると、優先席ってありますよね。

 

お年寄りや体が不自由な人、それから妊婦さんなどに優先して座ってもらうための席です。

 

車内に人がほとんどいないのであれば、若者でも、体に不自由がなくても、妊婦さんでなくても座ることができます。

 

お年寄りや体に不自由な人や妊婦さんが「優先」されるというだけで、そのほかの人が座ってはいけないというわけではありません。

 

私自身は、在来線や地下鉄に乗るときは、指定席か車内にいるすべての人が座れるくらいガラガラの時以外は、必ず立つようにしています。

 

理由は、もし私が席に座っていて、目の前にお年寄りが立っていたら、私は「譲るべきだろうか?もしかしたらそんなに高齢ではないかもしれない。譲ったりしたら失礼にならないだろうか?」と考えてしまうからです。

 

だから、いっそのこと最初から立つことにしています。

 

もちろん新幹線や指定席のある電車の場合は座ります。

 

高校は電車通学でした。

 

3年間毎日電車で40分かけて通学していました。

 

通学時間帯は通勤時間帯でもあり車内はとても混雑します。

 

あの頃の私は、とにかく座っていたくて、一度座ったら何があっても絶対立ち上がろうとはしませんでした。

 

もちろん優先席には座りませんでした。

 

あるとき、私が座っていた席の目の前に、かなり高齢と見られる男性がやってきました。

 

私は寝たふりをしていました。

 

寝たふりをしていると、いつの間にか本当に寝てしまい、夢を見始めました。

 

私の席の近くにいる人が、私を指さし、「高校生のくせに座ってるよ。どういうつもりなんだろう。誰か言ってやれよ」と言っている夢を見ました。

 

恐らく10分くらい経ったと思います。そのお年寄りは、私が起きた時には既に前の駅で降りたのか、別の車両に移ったのか、私の前から姿を消していました。

 

「ああ、何かあのおじいさんに悪いことしたな」と思いました。

 

次の日から、近くにお年寄りがいるときは、必ず席を譲ることにしました。

 

ある日、朝の満員電車の中で、私は運よく座ることができました。

 

私が座って2駅ほど通過した時でしょうか、一人のおばあさんが乗車してきました。

 

そして、私の斜め前に立ちました。

 

私は迷わず、「この席に座ってください」と言い、立ち上がりました。

 

おばあさんは嬉しそうに笑い、「ありがとうございます」と一言言い、私が座っていた席に腰かけました。

 

すると、近くに座っていた中年のおじさん二人が拍手をし始めました。

 

「いいぞ!高校生!なかなかできることじゃないよ!素晴らしい!」と大きな声で、私を褒めだしました。

 

すると別の人が、「若いのに偉いですね。どこの高校ですか?」と聞いてきました。

 

素直に高校名を答えると、その人は、「なるほど。私の息子もそこに通わせようかな」と言いました。

 

心の中で、なんだか嫌な感じがしました。

 

「あれ?なんか俺真面目で、親切な高校生になってない?みんなそう思っているよね?本当はそうじゃないのに。本当は座りたい。だけど、お年寄りが来たから仕方なくゆずぅただけなのに」

 

何日か経った時、朝のHRで担任が、「この前うちの生徒が電車の中で、お年寄りが来たのを見て、すぐ席を譲ったそうだ。それを見ていた人が学校に連絡してくれた。すごく気持ちが良かったとおっしゃっていた」と、明らかに私がしたことをクラスのみんなに伝えました。

 

もちろん私は名乗り出ませんでした。

 

「だって、本当は座りたかったし、皆もそうでしょう?一応、お年寄りが近くにいるときは、必ず席を譲るようにしているけど、別に深い理由なんてなくて、なんとなく譲っているだけなのに」

 

席を譲っただけで、拍手されたり、高校の名前を聞かれたり、朝のHRで紹介されたりして、なんだか面倒臭くなりました。

 

電車通学をやめることも考えました。

 

でも、自転車通学にすると、家から学校まで2時間かかります。

 

5時半家を出なければならない。

 

それはいくらなんでも辛すぎる。

 

電車通学を続けるしかない。

 

そこで、私は電車の中では立っていることに決めました。

 

ずっと立っていれば、席を譲る必要もないし、譲るか譲らないか迷う必要もない。

 

高校生だから、席を譲られることもないだろう。

 

そう思い、私はそれ以降電車では座らないことに決めました。