馬鹿な友人の話を匿名でする
僕は自分で自分は友達が多いほうだと思っている。
確かに僕の周りにはいつも友達がいる。
彼らが僕のことを友達だと思っているかどうかは分からないけど、多分そう思っているんだと思う。
僕の周りにはいわゆる意識高い系はいない。
みんなふざけたやつばかり。
僕自身がふざけたやつだから、お互いにひかれあったんだと思う。
そんなふざけた僕たちが集まると、決まってふざけた話になる。
単位の話とか、授業の話とか、最近のニュースの話とかについて話したことは恐らく一回もないと思う。
だってそういうことは意識高い系の人たちが僕たちの代わりに話しているから。
僕たちはふざけた集団だけど、馬鹿ではないと思う。
勉強ができるやつが馬鹿じゃなくて、勉強できないやつが馬鹿だとはこれっぽっちも思わない。
勉強ができるか否かと馬鹿であるか否かは関係ないと思う。
勉強ができない人のことを何て呼べばいいのかは分からないけど。
ふざけているけど馬鹿ではない僕たちの中にも、少なからず例外がいる。
ふざけていて馬鹿でもあるやつが数人いる。
この前その中の一人が僕の部屋に酒を持ってやって来た。
ただ酒を飲んでお喋りをするだけだろうと思ったから快く迎え入れた。
最初はくだらないことを話しながら焼酎をちびちびやっていた。
一本目の焼酎が終わるころ、彼が突然身の上相談を始めた。
同じ学部のみさきさん(仮名)のことどう思う?と唐突に聞いてきた。
「どう思うって、俺あの人あんまり知らないよ。一回だけ駅で偶然会って電車の中で話したことはあるけど」と答えた。
実際僕は同じ学部のみさきさんをよくは知らないし、知らなくてもいいと思っている。
「いや、最近俺インスタグラムを始めて、この前金沢の兼六園に行ったときに写真をアップロードしたんだよ」
うん、それで?
「そしたら、いつの間にかインスタグラムでみさきさんと友達になっているのに気づいたんだよ。そういうお知らせが来てた」
それで、それで?
「次に日の朝またインスタグラムから通知が来てて見てみると、みさきさんが俺がアップロードした兼六園の写真にコメントしてくれたんだよ」
なんて?
「私もこの前兼六園行ったよ。だいすけくん(仮名)はいつ行ったの?てか、写真撮るの上手だね、ってコメント。ほらこれ、見てよ」
ふむふむ。それがどうかしたの?
「いや、俺思うんだけど、普通こんなコメントするかな?」
どういう意味?こんなコメントってこれいたって普通のコメントだと思うけど。
「普通?これが?みさきさん明らかに俺に好意を抱いているんじゃない?そう思わない?好意まではいかなくても、少なくとも友達になりたがってるんだよ。多分」
いいね~!じゃあ、さっさと返信して、友達になれば?
「いや。この場合、インスタグラムでは返信しないほうがいいと思うんだよ。今度もしばったりみさきさんに会ったら、おもむろに兼六園の話をするんだよ。そしたら、兼六園の話で盛り上がって、そしたら食事でも行きませんかってなると思う」
そうかい、そうかい。そうなるといいね。
頑張って下さい、だいすけくん。