何があるか分からない それが人生 人生はぶっつけ本番

私はほとんど勉強しませんでした。勉強が嫌いだったんです。

 

だから、16歳で社会に出て、遊び歩いていました。

 

あの頃はとにかくイライラしていて、大人に反抗してばかりいました。

 

学校も面白くなかった。だから、学校に行かなくなったんです。

 

学校に行かずにあちこちで喧嘩をしてました。

 

結局のところ暇だったんです。何もすることがなくて暇を持て余していたんです。

 

ある時喧嘩をして警察のお世話になったことがありました。

 

両親が警察署に迎えに来てくれました。

 

あの時両親に言われました。

 

「お前は外で喧嘩ばかりしやがって。お前の尻拭いをするのはいつも俺たちなんだぞ」

 

それでも両親は私を見捨てたりしませんでした。

 

そして、父に言われたんです。

 

「お前いつまで喧嘩を続けるつもりだ?そんなことしたって何の解決にもならないのはお前も分かるだろう。将来何がしたいのか真剣に考えてみろ。明日市場に行って、一周歩いてみて、自分がどんな仕事をしたいか決めろ」

 

市場を歩いてみて決めました。

 

「豚肉を売る仕事をしよう」

 

理由は一番清潔そうだったからです。

 

それと市場で豚肉を売っていたおばさんはとても気品のある人で、それも豚肉を売ろうと決心した理由の一つです。

 

1977年に始めた豚肉業ですが、当時の台湾はとても景気がよく、どんな商売でも儲かりました。

 

79年までの2年でかなり貯金することができ、台南に家を買いました。

 

それからは2年毎に家が一軒買えるくらい商売繁盛しました。

 

もちろん達成感もありました。

 

30歳前の私は「成功した若者」の自負がありましたし、実際に生活も豊かになり、人生に満足していました。

 

でも、30歳を迎えたあの年、全てが変わってしまいました。

 

当時は男はギャンブルをするのが当たり前。私も毎日やりました。

 

妻も一週間で20万から30万くらい稼いでいましたが、私はそれより多い50万くらいをギャンブルで稼いでいました。

 

それでいい気になってしまいました。

 

よくある話ですが、ある日全てを失ってしまいました。本当に突然。

 

財産を失っただけでなく、自分の店も失いました。

 

全てを失った私は妻に「子どもを頼む」とだけ言い残し、台北に向かいました。新しい人生を始めるために。

 

台北に着いたあと、運よく玩具会社の経営者と知り合いになり雇ってもらえることになりました。

 

そして、台南の事務所で働くことになりました。

 

毎日夜10時まで働いて、それからお客さんと酒を飲む毎日が続きました。

 

その仕事を二年ほど続けたのですが、毎日仕事に追われ、とにかく疲れ切っていました。

 

ある日そんな私を見かねた店長が言いました。

 

「そんなに思い悩むことはないですよ」

 

そして、タバコ(のようなもの)を私にくれました。

 

私はピンときました。

 

「これはただのタバコじゃないぞ」と。

 

店長に聞いてみました。

 

「これって本当にタバコですか?」

 

すると店長は、

 

「何も考えなくていいんだ。とにかく吸ってみろ」と言いました。

 

とにかく吸ってみることにしたのですが、一口吸ってみると、その鼻を突くような煙に耐えることができず吐いてしまいました。

 

もう一度店長に聞いてみました。

 

「店長!これ何ですか?教えて下さいよ」

 

すると店長はしぶしぶ教えてくれました。

 

「あのなあ、これは金より高いんだ。英語でヘロインって言うんだ。一級品さ」

 

最初は好奇心から吸い始めただけでしたが、やがて中毒になりました。

 

ある日店長に聞かれました。

 

「それ買うのに一か月でどのくらい使っているの?」

 

私は特に何も考えずありのままの伝えました。

 

「三万くらいですかね。5万くらい使う時もあります」

 

その時思ったんです。

 

「このままじゃいつか金が底をつく。なんとかしないと」

 

そして思いつきました。

 

薬の仲介業者になれば、差額を手にすることにできる。

 

でも、闇を歩いているといつか鬼に出くわします。

 

悪いことをすればいずれ捕まります。

 

店長とその仲間が警察に捕まりました。

 

私は捕まりませんでした。

 

でも、店長が私に売ったことを証言したせいで、私も警察に呼ばれました。

 

そして裁判にかけられました。

 

裁判官に聞かれました。

 

「OOさんはあなたにも売ったと言っていますが、本当ですか?」

 

正直に言えば、私が罪に問われることはないと思ったので、正直に言いました。

 

「一回だけです。神に誓って、一回だけです」

 

この一言で、15年の刑が決まりました。

 

終わり