真冬の朝外に出てみると

雪が降らない南国育ちの人には理解できない感覚だと思う。

 

そういう私も、子どもの頃は冬が嫌いだった。

 

冬は薄暗い。

 

時々陽が出ることはあるけど、束の間の日の光も一瞬で消えてなくなってしまう。

 

太陽が隠れてしまった後は、また薄暗いどんよりした空気に変わる。

 

冬の夕方は特に嫌いだった。

 

夏や秋には心が洗われるように美しい夕日が見られる池のほとりも、冬になると空気が変わる。

 

もう、冬のない場所に引っ越したい。

 

毎年冬が来るたびにそう思った。

 

なんで冬なんてあるんだろう。

 

毎年冬が来るたびに疑問に思った。

 

くだらないことかもしれない。

 

でも、大人になって、冬の良さが少しだけ分かるようになった。

 

それは、昔うちに遊びに来た大人たちが教えてくれたこと。

 

「冬の朝は格別だよ」

 

大学に入学したのと同時に私は大学の寮に入った。

 

クリスマスの少し前に大雪が降った。

 

11月の終わりに初雪が降った後一度も降っていなかった雪。

 

その日の朝は布団から出られないほど寒かった。

 

冬の空気になっていた。

 

その日は朝一の授業があったので、仕方なく布団から這い出て、身支度を整え、外に出た。

 

辺りは一面雪景色。まさに、白銀の世界だった。

 

降りたての雪はピカピカ光っていた。

 

初めて雪が綺麗だと思った。

 

でも、私が思う冬の良さは雪が綺麗だということではない。

 

私は授業に行く前にタバコを一本吸うのを日課にしている。

 

その日も、玄関を出て、タバコに火をつけた。

 

その瞬間が私が思う冬の良さだ。

 

とにかく気持ちよかった。

 

タバコの煙が冬の空気とともに私の体の中に取り込まれる。

 

その感覚はなんとも言えないものだった。

 

それから私は、冬も悪くないな、と思うようになった。